ばくだん凛ちゃん
本当に凛ちゃんはお父さんソックリだね。
小さいのに自分を持っている。
末恐ろしいよ、僕は。
透を小さい時から知っているだけにね。
君もそんな棘の道を歩いて行くのだろうか。



「そういえば兄さん」

透の声で我に返った。

「生駒医院の引き継ぎは上手くいってるの?」

そうだ!
僕がここに来た理由を凛ちゃんのおかげで忘れるところだった。

「そう、凛ちゃんのお食い初め、ひょっとしたら来られないかもしれない」

透とハルちゃんは顔を見合わせた。

「そんなに大変なの?」

透の声は動揺を含んでいた。
透にも4月から夕方から入って貰うから。

「スタッフが思ったよりも辞めてしまうので。
経理に長けている人が辞めて、僕が色々としないといけない。
募集を掛けてもこれっていう人材がね…」

「まあ、患者と医師のように相性もあるしね。
院長と事務方かあ…」

透、さすがはわかってくれるね。
お前と二人で新しい運営をスタートさせたかったなあ。

「そうだ、兄さん」

透の目がキラキラと輝く。

「無理のない程度にハルに経理を手伝って貰ったら?」

透と向かい合い、食事をしているハルちゃんは目を丸くして全ての動作を停止させた。

「…しかしなあ」

僕は視線を下に落とした。
凛ちゃん、どうするんだ?
口を動かしながら寝ている凛ちゃんの頬をそっと撫でた。

「毎日は無理だとしても、ハルの都合の良い時間帯でさ。
凛ももちろん同伴になるけれど。
散歩するには良い気候になってきたし、仕事を少しでもする事でハルも良い気分転換になるかもしれないと思うんだけど?」

透はハルちゃんの顔を覗き込んだ。
ハルちゃんは迷いまくっている表情を見せている。

「ハルは結婚するまでずっと働いていて、妊娠して会社を辞めて、今までと全然違う生活をしている。
凛は多分、少し育てにくい子だと思うからどこかでハルの息抜きをする場所があれば…。
ただ、凛が一緒だとストレスが溜まる可能性があるけれど」

その辺りの逃げ道はある。

「まあ隣が保育園だしね。
一時保育に空きがあればそこで見てもらって良いと思う」

桃ちゃんがこの春からは園長だしね。



僕はハルちゃんを見つめた。

僕と透の顔を交互に見つめて、何やら考えている。
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