結婚ラプソディ
2.結婚式前日

★ 高石 至 ★

当直から日勤が終わり、ようやく帰宅出来る。

明日は透の式だし、早く帰ろう。

…って思ってたら。

目の前を歩いていた小児科の黒谷先生が急にしゃがみ込んだ。

「おいおい」

僕は黒谷先生の前に回り込む。

「大丈夫ですか?」

「…すみません」

黒谷先生の手を引いて、内科医局まで行った。

僕の席に座らせて、水を渡す。

「ありがとうございます」

黒谷先生が頭を下げる。

「いえいえ。
それよりも随分お疲れのようですが」

小児科…透が長期離脱しているからしわ寄せが来ているのかな。

「高石先生がいないと気軽に聞ける人がいなくて…。
些細な事でも気になる事は高石先生に相談してから判断していたのですが、そんな相談を出来る人が今の小児科には他にいません」

ああ、そうなんだ。
黒谷先生にとって透は精神安定剤なんだね。

「まあ来週火曜には戻ってきますし、それまでは黒谷先生、大変だと思いますが頑張ってください」

黒谷先生は微笑んで

「何とか乗り切ります。あ、でも!!」

少しだけ目が輝いた。

「明日、高石先生の晴れ舞台を見たら元気になるかも。
ずっと楽しみにしてたんです。高石先生がいつ泣くかなって」

…ここにも透をいじる人が。

「まあ、それを生きる糧にしてください」

「はい!!」

とはいえ、精神的に参っているんだろうな。
後ろ姿に力がない。

透の影響力はどこへいっても大きいな。



…明日、本人たちもだけど周りも大変だろうな。
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