結婚ラプソディ

☆ 高石 ハル ☆

式前日。

スピーチ等を頼んでいる方に早めにお願いの連絡を済ませ、夕方に透の実家へ2人で行った。
実家といっても今は仮住い。
透が昔住んでいた実家は今は取り壊され、秋には私達と義両親の二世帯住宅がそこに立つ。

でも…いまだにお義母さんには緊張する。
良くしてもらっているけれど、どう対応していいのかわからない時がある。
お義父さんは何となく慣れた。

「どう、体調は?」

お義母さんの問いに少し緊張しながら

「はい、ここ数日は大丈夫です」

透が休暇で家にいるようになると自然とつわりも治まった。
ひょっとしたら精神的なところが大きかったのかもしれない。

「お腹、だいぶ出てきてるけど明日は大丈夫かしら」

明日の式は神前。
白無垢を着るけど、やはりお腹を心配される。

「この前、試着した時は配慮されていましたよ。
苦しくなかったです」

と伝えると少しだけホッとした様子だった。

「ストレスが掛かるとどうしても体調が悪くなるから…。
明日1日の我慢だぞ」

お義父さんはそういう事を時々言う。

心配してくれているんだ、と思うと嬉しい。

「はい」

微笑みながら頷くとお義父さんも微笑んだ。

その時に、あっ、やっぱり透と親子だなって思う。



しばらくして家のチャイムが鳴りお義母さんが出る。

至お兄さんと桃ちゃんの声が聞こえた。

「ごめん、遅くなって」

「ハルちゃんー!」

お兄さんの言葉を掻き消すように桃ちゃんが私を見て、笑った。

いつもなら抱きついて来るのに今日はそれを察したお兄さんが桃ちゃんの腕を掴んでいる。

「至さん…離せぇ…」

桃ちゃんが頬を膨らませてお兄さんを見ている。

「駄目。
今のハルちゃんは桃ちゃんのパワーを受け止められない」

「えー!」

「えー!、じゃない」

お兄さんは無理矢理桃ちゃんを椅子に座らせた。



それからしばらくしてお義母さんがテーブルいっぱいの料理を運んできてくれた。

手伝おうとしたら、

「ハルさん、手伝わなくていいから。
また産んでから、皆で集まる時はお願いね」

お義母さんはそう言って微笑んだ。
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