結婚ラプソディ
「明日、楽しみー!」

桃ちゃん、本当に嬉しそうに言うけど…
私は不安でいっぱい。
あの親戚、そして透の仕事関係。
私にとっては想像も出来ない世界だわ。
透みたいに堂々と立ち振舞いが出来たら良いけど、残念ながら私にはそういう事は身に付いていない。

私は急に食欲がなくなってしまってお箸を置いた。

「どうした?
気分でも悪いのか?」

お義父さんの言葉に私は首を横に振る。

「帰ろうか?」

透の言葉にも首を横に振る。

「…ごめんなさい。
色々と考えたら苦しくなってきました」

ああ、せっかくの食事の時間が…。
私のせいで雰囲気ぶち壊しだわ。

「…ごめん、私が騒ぎすぎたかも」

桃ちゃんの言葉にも首を横に振る。

「…違うの」

明日、ここにいる人達に迷惑が掛かってしまっては申し訳ない。
自分の気持ちを伝えよう。
私は顔を上げた。

「私の育ちは良い方とは言えません」

突然の発言に目を丸くする周り。

「透と再会してから、このまま結婚するのだろうとはどこかで思っていました。
それが段々現実になっていき、今ここにいますが」

手が震えるのをギュッと押さえた。

「自分の立ち振る舞いや言葉遣い、態度は透と釣り合っているのか。
またこの家にふさわしいのか。
ずっと、ずっと…考え続けています」

ずっと、私は苦しんでいるの。
苦しくて苦しくて仕方がないの。
本当はもっと前に声を大にして言いたかった。
でも中々言えなくて…今しか言うチャンスはない。

「私のせいでお義父さん、お義母さん、お兄さん夫婦。
そして一番、私の存在が影響する、透。
もし顔に泥を塗るような事があれば…」

「その気持ちだけで十分です」

落ち着いたお義母さんの声が聞こえた。
私はゆっくりとお義母さんの顔を見つめる。

「相手を思いやる気持ちがある限り、その相手に対してふさわしい行動が出来るはずです。
ハルさんが透を思う気持ちは見ているこちらにも痛いほど伝わってきます」

お義母さんは唇をキュッと結んで口元を上げて微笑む。

「もう、透は一生結婚しないと思っていました、私のせいで。
でも、一度別れても再び出会って…結ばれたのよ。
透が本気で選んだ人なんですもの。
ハルさんは透にも、この家にもふさわしい人ですよ」

私は唇を噛み締めて俯いた。
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