結婚ラプソディ
「何沈んでいるんですか?」

俺の顔を覗き込んで黒谷先生が言う。
こうやって見ると綺麗な顔をしているんだけどなー。
俺好み。

「…何も沈んでいませんよ」

ただ、性格がね。
遠慮なく突っ込んでくる。
透先輩もよくこんなの相手にしているよな。

「明日の当直、考えていませんでした?」

ギクッ。

「…多分俺、一睡も出来ずに透先輩に付き合う事になると思う」

「頑張ってください」

ニコリと笑う黒谷先生。

「黒谷先生も付き合いません?」

「…彼に羽交い絞めにされますよ、神宮寺先生が」

あ、そうね。
保護者様が許さないね。

「何歳離れているんだったっけ?」

確か俺より年上なはず。

「11歳ですよ。今年、40歳になります」

「…そんなに離れているの?」

黒谷先生が頷く。

「もう付き合って12年くらいになりますけど」

12年!!

「え、黒谷先生、今…」

「29ですよ。17歳の時から付き合っています」

…え。

「どうやったら知り合えるの?」

「子供と触れ合うボランティアで」

はあ、なんだか凄いね。
世界が違うよ、俺と住んでる世界が。

でも…。

「いいなあ、若い子」

黒谷先生の冷ややかな目が俺を突き刺す!!

しまった…

「変態」

おおおー!!
こいつに何回、『変態』と言われるんだ。

「…コホン。
でも、まだ結婚しないの?」

おせっかいだとは自分でも思う。
けど…

「私の後期研修が終わってから、ですって」

じゃあ、あと半年ちょっとじゃないか。

「式、呼んでください」

「…人数足りなければ」

何だよそれー!!

「あ、でも」

俺を睨みつけると

「神宮寺先生、私の大切な友達に手を出しそうだからやっぱり嫌です」

…出さないよー!!
出して良い相手と悪い相手くらいはわかってるし。

黒谷先生の友達なんかに手を出したら。
まず、透先輩が俺を絞め上げるだろう。
だって、今まで何度女関係で透先輩が助けてくれているか。
次やったら抹殺する、と言われているし。

いや、俺の関係はどうでもいいんだ!!
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