結婚ラプソディ
「ずっと昔の。
違う自分がこの世界のどこかで生きていた時から縁が深いんだろうね」

兄さんが肘を付きながら、僕を見つめた。

「僕、何気にこの二人の人生で、キーポイントになるような出来事の時に遭遇しているんだけどね。
本当にビックリするような事が多々あったよ。
…きっと二人がこの世で一緒になる為に乗り越えなければならない試練だったんだろうね」



そうかもしれないね。



「ドラマになりそうな話だな」

哲人は感心したように呟く。

「…でも先輩」

速人、一体なんだ?

「それはそれ。
俺が聞きたいのは何故避妊しなかったのですか?
それが先輩らしくないんですよ」

お前、そこにこだわりすぎ。

兄さんがクスクスと笑いだした。

「確かに透らしくないね。
でも透には理由があるんだよ」

兄さん、言わなくて良いから。

僕は兄さんの口を塞ごうと手を差し出した。

「透がハッキリ言えば?
僕には顔を真っ赤にして言ったじゃないか」

兄さんが僕の腕を掴んだ。

「…言いたくない」

「「えー!聞きたい!」」

また、速人と祥太郎君の声がダブった。

「透、俺も聞きたい」

哲人まで…。



僕は深呼吸をして口を開いた。



「ハルが肺炎で入院している時、ストーカーみたいな上司が見舞いに来てて…。
明らかにハルが嫌がっているのに上司は勝手な想いをハルに押し付けていたんだ。
こんな奴にハルを取られてたまるか、と思った事と、後は今まで人の心をメチャメチャにしてきた、母さんへの当て付け。
子供が出来たら文句は言えないだろうって」

哲人は声を上げて笑った。

「透、意外に子供っぽいな」

「仕方ないだろ。
何としてもハルを…自分と繋げておきたかったんだ。
形のあるもので」

言葉で対応出来る人々なら対応している。

あの上司は何をするかわからなかったし、実際にギリギリの事も起こったし。

母さんにはそれだけ僕が真剣だという事をわかって欲しかった。

「もう、いい?」

僕は速人にそう言うと空いたグラスになみなみと注いでやった。

「えー!
まだ!!」



まだ聞き足りないのか!?
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