大人の初恋
 朝の5時。カーテンの向こうが仄明るい。

 オヤ?……いない。
 ふと目を覚まし、横を見ると彼の姿が見当たらない。

 重たい頭を抱えながらのっそりと起き上がると、シャワー室から音がする。

 そうだ、昨夜はシャワーも浴びずに眠ってしまったんだ。
 
 見ると、一体昨夜は何があったのかというくらい、あちこちに私と彼の衣服が脱ぎ散らかしてある。


 もう、やだなあ…恥ずかしいったら。


 元カレのせいで癖になっていた『私ってば家庭的なオンナ』アピール。
 そう、私はケッコンがしたかったのだ。

 よせばいいのに、散らかった衣服をキレイに片付け始めてしまった。

 脱ぎ捨ててあった彼のスーツを拾い上げ、意地汚く裏地のタグを確認してしまう。

 おお!ゼニアのオーダーメイド。
 
 感心しながら眺めていた、その時だ。

 ポケットから、キラリと何かが転がり落ちた。
 それは縦向きに丸くコロコロと弧を描き、私の足下でピタリと止まった。

「…………」



 程無く彼が、シャワールームから現れた。

 
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