大人の初恋
「…そっちがどういうつもりか。
 オモシロイから聞いてあげようと思っただけよ」

 わずかに語尾を上げ、ツンと顎を上げて頬杖をついて見せると、彼は小さく肩を竦めた。
 
「最初の日、君から電話をくれただろう。てっきり『気が向いた』のかと思ったんだけど?」

 言い放ち、自然にグラスを口に運ぶ。

「あれは違っ…」

 貴方を困らせてやりたかっただけなのだと、喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ。

 ひどく子供っぽいと思えたからだ。

「2週間も前のコトだわ。
 何を今さら返信するの?」

「やっと手が空いたから。嬉しかった。君を忘れたことはなかったよ?」

 わざとらしく、熱っぽい視線を向けてくる。

 ふざけてる。
 分かっちゃいるのに、安い台詞についクラッとキている自分が情けない。

 ようし。
 私は、わざと厳しめな口調で切り返した。

「前にも1度電話したわ。だけど貴方、出なかったじゃない」

 イカン。
 これじゃあまるで、相手にされずに拗ねてる女じゃないか。

 心の動揺を隠すように、サラリと自慢の髪を肩の後ろにやり、クールを装う。
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