大人の初恋
12 包まれて
 その後。

 私達は海外の教会で、身内だけの小さな式を挙げた。

 式を終えた招待者は三々五々に散っていき、私達はそのまま1週間のハネムーンを過ごす。
 
 今夜はその初日。
 ホテルのバルコニーで眺める南十字星がキレイだ。
 彼女の星も、私達を祝福してくれるだろうか。
 ボンヤリと空を眺めていると、いつの間にか後ろに彼が立っていた。
 彼もまた、同じことを考えているのかも知れない。
 2人で暫く無言で星空を眺めた後。
私はふと、気になっていた事を尋ねてみた。

「ねえ?本当にこんなに長くこっちに居て、大丈夫なの?」

「うん。2年間で任せられるヤツを数人鍛えたからね。
 僕はどうも、一人で抱え込む癖があっていけないと、悪友にもいわれたことだし」

 前にリョウちゃんが言ってたのと同じだ。プッと吹き出した私を、彼は後ろから抱き締めた。

「きゃ…」
「君との時間が何より大事だ」

 そのまま胸元に手を伸ばす。然り気無く、ボタンを1つ外した。

「ちょっと!」
 彼が首筋に口付けた。

「明日はコアラを見に行こう。あのコが一度、抱いてみたいと言っていた」

「そうね…って、ちょっと待って?」

 言いながら、あっという間にボタンを全部はずし終えている。

 私には時間を、『あのコ』にはコアラを、じゃあ、これは…

「これは僕が今したいこと」

「はあっ?」

 この人、こんなヒトだったっけ?

 
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