100万回の祈りをキミに



「あーなんか藍沢って理想高そうだもんな」


雑音の中から聞こえた声。

一瞬周りがシーンとして、声の主を目で追うとそこにいたのは夏井健斗だった。


夏井はなくなりかけている飲み物をストローでジュジュッと吸い上げて私を見た。

近くに座ってるから私たちの会話は聞こえていたと思うけど、さっきの言葉は……。


「イケメンで高身長で優しい人がタイプ、とかそんな感じだろ?」

「………」


この人なんなの?

今日会ったばかりで普通そんなトゲがある言い方する?


「な、夏井どうしたんだよ。藍沢さんいじめるなって!」

「そうだよ!藍沢さんが可哀想」

周りのみんなは場の空気を壊さないように笑って夏井をなだめていたけど、なぜか夏井はまだ不機嫌だ。


「いじめてねーし。ただ恋愛は興味ないって言ってるヤツほど理想が高いって事実を言っただけで」

「なんで知りもしない人にそんなこと言われなきゃいけないの?」


また笑って誤魔化そうとしたけどムリ。

こんな失礼な人に会ったことないし、そこまで不機嫌になる理由もわからない。

私だって空気を読みたかったし、みんなのテンションを下げるつもりもなかったのに私が怒鳴ったせいで空気は最悪。

しかも夏井はなにも言い返してこないし私が悪者みたいだ。


「ごめん。帰る」

それに耐えられなくて、私はカバンを持って店を出た。


「あ、待ってよ。波瑠!」

その後ろから凪子が追いかけてきたけど、私の足が止まることはなかった。


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