100万回の祈りをキミに

・追憶の園






高校生活2日目の今日。

まさかこんな憂鬱な気分で迎えるとは思ってなかった。


「波瑠昨日ごめんね。私が無理やりあんな場所に行ったから……」

「凪子のせいじゃないよ」

あれから凪子はずっと責任を感じてるし、ごめんねもこれで7回目。途中で帰ったことも気まずいけど憂鬱の理由はそれだけじゃない。

教室に行けばまたアイツの顔を見なきゃいけないし、なによりこれから1年間同じクラスっていうのがツラい。


「藍沢さんおはよう」

教室に入ると意外にもみんな普通だった。「あんなので帰るなんて心狭い」とか言われてると勝手に想像してた。


「昨日大丈夫だった?あれは誰が見ても夏井が悪いし藍沢さんが気にしなくていいんだからね」

みんながそう言ってくれてちょっとホッとした。

さすがに入学早々にひとりぼっちになったらキツいと思ってたし、なんだかんだクラスメイトたちとはうまくやっていけそう。

……ひとりを除いては。


「とりあえず謝っとけって!」

男子に背中を押されて夏井が出てきた。

根にもつタイプじゃないけど昨日のアレで夏井に対して苦手意識ができてしまっていた。


「まぁ、その。昨日はちょっと言い過ぎたというかその……」

歯切れがわるいし、周りから謝れって言われて仕方なく謝っているように見えた。


「いいよ。べつに気にしてないし」

私はそれだけ言って席に着いた。

苦手なら関わらなきゃいいだけの話。


高校なんて最初から楽しむ気なんてないし、私の中でここは彼のいた学校であり、彼が見ていた景色を見ることができる唯一の場所。

ただそれだけ。


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