食わずぎらいがなおったら。

迷子の行方

その時、電話がなった。

平内タケルと表示されてる。何?

「もしもし?」

「香さん? 男の子、確保したよ」

うそ!

言葉が出なくて、口を押さえた。




「子供ほっといて何やってんの?」

怒ってる。当たり前だ。

「ごめん、ごめんね。迎えにいく。今どこ?」

「ちょっと待って。代わる」



「香ちゃん?この人ほんとに香ちゃんのともだち?」

ほんとに健太だ。

「そうだよ。平内タケル。会社の友達」

「じゃあしらない人じゃない?ついていってもいいの?」

「大丈夫、その人はいい人だから。迎えに行くから待ってて」

よかった。なんで平内が見つけてくれたのかわからないけど、とにかくよかった。



平内に代わった。

「境内の社務所のあたりに来れる?」

「5分ぐらいかかると思う。もっとかも」

「わかった」

もう大丈夫とわかってたけど、やっぱり急いで戻る。






社務所の前に、1人で平内がいた。ポケットに手を突っ込んで、明らかに怒ってる。

もともと睨まれてた上に、子ども押し付けられてるんだもんね。

「ごめん。ほんとにごめんね。健太は?」

「友達のとこで飯食ってる。腹減ったって」

「よかった。ありがとう」

電話でもう大丈夫ってわかってたんだけど、平内の顔を見たらやっとほっとして力が抜ける。




でもなんで?どこにいたの?私といた子だって、すぐわかったの?

「すっげー目立つ蛍光シャツの子が、しゃがみこんでスーパーボール見てて。大人が周りにいなそうだったから、声かけた」

そうなんだ。お姉ちゃん、あのシャツ正解です。



「連れは?」

「連れ?」

健太の母親のこと?

わからず見上げると、平内は何でか無言になり、私の手を引いて歩き出した。




混んでると女の子の手をつなぐのが平内標準なのかなぁ。

ありうるな。

そういうことされちゃうと女はドキドキしちゃうんだ、ってわかっててやってんのかな。

どう見てもイライラしてるくせに、なんなのかなこれ。
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