食わずぎらいがなおったら。

田代さんの出産祝い

鍵を返されてから、決定的なことを言われるのが怖くて、話しかけられずにいる。

それに平内は忙しそうだ。チームが帰っても、ひとりで何かやってるか、席にいなくても帰ってない。

何時までいるんだろう。



田代さんもいつも遅くまで残っているみたい。

トラブルが落ち着いて以来、細かい仕事ははまた手伝ってるけど、そういう忙しさじゃなさそう。

最近は、会議なのかあまり席にいなくて、戻って来るとリーダー達を呼んで話し合っていることが多い。




帰り際に、休憩室に入っていく田代さんの姿を見つけて覗いた。1人だ。コーヒーを買ってる。

「臨月ですよね。まだ帰れないんですか」

近くまで行って、後ろから非難を込めて声をかけたら、驚いたように振り返った。

「産まれてからは帰れるように、今頑張ってるところ」

言い訳じみた苦笑で答える。



そうね、産後手伝ってくれたら役立ちますよね。

でもね、奥さん不安なんじゃないかな、今回も。今、そばにいて欲しいんじゃないかな。


そんなこと上司に言うのも失礼かと思って遠慮するけど、顔をしかめてみる。

「大丈夫だって。順調だよ」

わかってるのかわかってないのか、田代さんは気軽に言って、頭をぽんっと叩いて戻っていく。

もう、男って結局仕事だなってため息をついたところに、お疲れ様ですって平内の声が聞こえて振り向いた。


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