食わずぎらいがなおったら。
結局朝ごはんを作って、部屋でのんびりすることにした。

食後も、床に座ってソファに寄りかかりコーヒーを飲んでる。



「また会社行くと、真奈ちゃんがどうのって言い出すだろうから先に言っとくけど」

あ。そうだった、真奈。どうなってるの。わざと来なかったってなんかあったんでしょ。



「こないだ告られて、断ったよ。でも1回だけって言われて、それで終わってるから」

え。そうなの。そういうことなの。いいけど。そうなんだ。やっぱり、そうなんだ。



目が泳いだのを自覚して、慌てて前を向いたら、呆れたように横目で睨んでる。

「なんもしてないよ。なんだよ、その顔。自分でけしかけといて、ほんとわかってないよね」

「そんなことけしかけてないし」

いや、けしかけたかも。どうかな。



「昨日の話聞いてたのかよ。他の子は食わないって言ってんだろ」

なんか柄が悪くなってますよ。

でもよかった。正直ほっとした。やっぱりやだよ。




「田代さんにも断られたんだろ」

え。予想外のことを言われて固まる。なんでわかるの、そんなことまで。

 「真奈ちゃん見てたら、なんかわかった。我慢したんじゃないの。意外とすごいよね、あの人」

前にも聞いたな、その台詞。



「タケルも我慢したの?」

「真奈ちゃんは、振られるの前提みたいな感じだったよ。香は違うだろ」

「若かったし」

怖いもの知らずだったよ、ほんとに。結婚するって言ってるのにね。1回だけでもいいから、なんてね。

自分の身になってみればやっとわかる。いやだよねそんなの。

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