せめて、もう一度だけ
離婚届を提出してからも、戸籍や住民票の手続きは面倒だったけど、遼と新しい人生を送るためには絶対に必要なことだったから、がんばった。


離婚が成立したのが、11月5日。


でも、遼と私は、出産するまで入籍できない。


それまでは、いわゆる事実婚ってわけで。



離婚する前、両親に会って伝えた時、初めは怒ったりあきれたりして認める雰囲気はなかったけれど。


遼と私が何度も何度も話して、なんとか納得してくれた。


遼のご両親も、結婚相手が年上バツイチで、血のつながらない子どもがもうすぐ産まれることを気にしていたけど。


最後には、許してくれた。



離婚って、まわりのたくさんの人にすごく迷惑をかけるんだな。


家族にも、微妙な距離感が残ってしまったし。




公園でぼんやりしながらいろいろ思い出していたら、けっこう時間がたっていた。


今日は、遼の大好きな唐揚げを作ろう。



私たちは、これからずっと一緒で。


もうすぐ、3人家族になって。


初めての育児にとまどって、イライラして、遼とケンカしたりして。


でも、手をとりあって、暮らしていくんだ。



「ミキ、ただいま」


「おかえり」


「おっ、今日は唐揚げか、やったー」


「いっぱい作ったからね」


「ミキも、赤ちゃんの分まで食べろよ。


あっ、エコー写真みせて」


「その前に、手を洗ってきて」


「はーい」



こんな、他愛ない会話が、ずっとずーっと、続きますように。







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