せめて、もう一度だけ
振り向くと、田辺さんが笑っていた。


「おはよ」


「えっ、あ、お、おはようございます・・・」


「驚いた?」


「うん、今日は休みだと思ってたから」


「病欠が出て、シフト変わったんだ。


ビックリさせようと思って黙ってたからさ。


目が真ん丸に見開いたスゲー顔見られたから、成功だな」


「ち、ちょっと、ひどくない?」


田辺さんは、笑いながら事務所へ入っていった。


私は、顔がニヤついたままなのを自覚しながら、タイムカードを押しにいった。


私たちのやりとりを、小宮さんが見ていたことに、私はまったく気づいていなかった。





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