せめて、もう一度だけ
「それは・・・」


言いかけて、諒と一緒にいる理由がすぐには思いつかなかった。


うまくいってない理由は、すぐに答えられるのに。


「結婚して4年もたてば、空気みたいになるから」


どこかで聞いたことがあるようなことしか、言えなかった。



「俺さ、この前ふたりで会った日、焦って好きだって言ったから変に緊張しちゃって、夕方なのに帰っただろ?


あれ、めちゃくちゃ後悔してさ。


せっかくミキに時間があったのに、チャンスを無駄にしちゃったから」


そう言うと、遼くんは思い出したのか落ちこんでいるように見えた。


「今日はまだ午前中だし、ここなら誰かに聞こえることもないし、何かあるなら聞くよ?」


母性本能がくすぐられたのか、私はポロリと本音をしゃべった。


「俺が聞きたいのは、なんでダンナとうまくいってないのかってこと。


もしミキがダンナと仲良ければ、俺の誘いになんかのってこないはずなのに、会ってくれたってことは、何かあるんだってことだろ?」


その通りだ。


私は、今の生活に不自由はなくても、不満足だったから。


だから仕事を始めて、環境を変えたんだ。


そして、遼くんと出会った。



出会う順番が違っていたら。


私は何の迷いもなく、遼くんと結婚して、今ごろ子育てに追われて慌ただしい毎日を送りながらも、幸せな家庭だったんじゃないかと思ってしまう。



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