せめて、もう一度だけ
デスクまわりの片づけをしていると、小宮さんに呼ばれた。


「ねえ、赤ちゃんできたんでしょ、おめでとう」


「ありがとうございます」


「まさか、田辺くんとの子どもじゃないよね?」


「・・・はい、違います」


「それならいいんだけど。


やっぱり、ご主人を選ぶのが正解だと思うよ」


「あの、田辺さんにはこのことを言わないでもらえますか?」


「いいけど、田辺くんと会ってないの?」


「はい」


「そっか、だから最近田辺くん元気ないんだ」


納得納得、と独り言をつぶやきながら、小宮さんは部屋を出ていった。



遼くんと初めて会った自転車置場。


一緒にお弁当を食べた休憩室。


ここに来ると、遼くんのことばかり考えてしまう。



もう少しも、離れたくないのに。


これからは、離れていかなきゃならない。


今の私には、そんなことできそうにないけど。


ねえ、遼くん。


今どこで、なにしてるの?


会いたいよ。





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