せめて、もう一度だけ
仕事初日は、感覚を取り戻すのにとまどった。


定時の17時まで残ろうとしたけど、みかねた小宮さんが早退させてくれた。


「明日もあるんだし、無理しなくていいから」


「ありがとうございます、お先に失礼します」


ジリジリと照りつけるような日差しの中、もてあました時間をどう過ごすか考えた。


浮かんだことは、ただひとつ。


遼くんに、会いたい。


私の足はまっすぐ、遼くんのアパートへ向かっていった。


駐車場に遼くんの青い車はなくて、アパート入り口の木陰で待つことにした。


遼くんに会えたら、何て言おう。


ごめんね。


だいすき。


さよなら。


どれもしっくりこない。


伝えたいことは、私にとっての一番は、遼くんだってこと。


それを伝えるには、どうしたらいいんだろう。



諒が帰ってくるタイムリミットまで、あと30分。


青い車が戻ってきた。




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