せめて、もう一度だけ
8月後半、諒が準備を兼ねて仙台へ3日間出張することになった。


「美希子も一緒に行けばいいのに。


新居とか産婦人科とか、地元のお店とか知りたくないわけ?」


しつこく言われたけど、


「長時間の移動は、なるべく1回にしたいから」


断り続けた。


遼くんとゆっくり過ごすのは、最後かもしれないから。



遼くんが夏休みを合わせてとってくれて、ふたりで一泊旅行する計画を立てた。


ふたりとも行ったことのない軽井沢にした。



諒が出かけてから、ゆっくり歩いて遼くんのアパートへ向かった。


諒といると、いつも監視されているような気がしたけど。


それから解放されて、久しぶりにリラックスしていた。


でもどこかで、今回の旅行が最後の思い出になるかもしれないって覚悟もあった。



遼くんは、


「おはよ」


いつもと変わらない笑顔で待っていた。


まぶしくて、かっこよくて、少しせつなかった。







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