ビター・アンド・スイート
リョウはちょっと息を吐いてから、
「俺は子供の頃から、冷えた家族関係の中で育ってきた。
必要なものは与えられていたから、
親の義務は果たされてたのかもしれない。
でも、俺にとって夫婦や家族の愛情ってよく分からない。
ハヅキみたいに好きになったオンナはいないから、
どうしてもそばにいたいっておもうけど、
上手く愛せているかわかんねーんだよ。
思いついて、すぐ行動したくなるし、つい、憎まれ口が出るし。」と私の瞳を覗くので、
「リョウは結構強引だって思ってますけど、
愛されてるって思っていますし、
大切にしようとしてくれてるって、そう思います。
私も愛情表現は下手なので、
リョウに上手く、伝わっていないかもって不安になる時があります。
1度、結婚に失敗していますし…
それでも、私はリョウが好きです。一緒にいたいって思います。」と見つめると、
「それってハヅキの告白?」と嬉しそうに私を固く抱きしめ、深くくちづけしてくる。
私もくちづけを返す。
「ヤヨイちゃん、外泊してくれないかな。
今すぐにでも、押し倒したい。」と笑うので、
「この家ではそんな事、出来ません。」と顔をしかめてから、
「それぞれのお家にご挨拶に行きますか?」と聞くと、
「どっちも親を呼び出すよ。きっと、今の家族にはあんまり俺の話はしてないだろうし、
きっと、ふたり一緒には済ませられないって思うけど。」とリョウは笑った。
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