ビター・アンド・スイート
秋風が吹く頃、
私達はリョウの両親それぞれに挨拶を済ませた。
同じ日の午前と、午後に約束して、
ホテルのティールームで待ち合わせた。
どちらも時間ぴったりにやって来て、スーツ姿で私達の前に座り、
私の着物姿を褒め、久しぶり。と懐かしそうに息子を眺めた。
30分くらいは話すと、
名残りを惜しむ事もなく、離婚歴のある私とのお付き合いを反対もせずに、
仕事があるので、また改めて。
今度会うのは結婚式かな。と微笑んでいなくなった。

車に戻って
「ね。アッサリしてるでしょう。」とリョウは苦笑いを浮かべたけれど、
少し、寂しそうに見えた。
もう少し、自分達の子供に関心を持ってくれてもいいかな。
うちの親だったら、きっと、もっと、交際相手のことを知ろうとするんじゃないかな。
そう思うと、私は少し悲しくなって、
リョウの腕の中でくちづけをねだってしまった。

まあ、ホテルに部屋を取って、着物を脱がされるっていう事になったけど、
リョウは私を抱きながら、
「俺から離れないで。」と何度も囁いて、私を固く抱きしめた。
「ずっと、一緒にいる。」と私も何度も返事をしながら、お互いを求めあった。

きっと、リョウのこれまでの寂しさを埋めることは出来ないけれど、
これからは私が一緒にいる。
そう思いながら、リョウの腕の中で眠りについた。

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