恋は理屈じゃない
LOVE*1

花嫁になってくれ


赤いバラとピンクのガーベラ、白いカーネーションに緑のアイビーとレモンリーフの葉を使い、メインテーブルの上を豪華に見栄えよく飾りつける。

こんな感じかな?

足を後退させると、バランスを確認する。

もう少し、ボリュームアップしてもいいかも……。

前方に移動するとバラとガーベラを手に取り、メインテーブルの上に配置した装花(そうか)に加える。そしてまた数歩下がると、バランスを再確認した。

うん。いい感じ。

エアコンが利いている室内にいても忙しく動き回っていると暑さを感じる。「ふう」と息を吐き出すと、額に滲んだ汗を手の甲で拭った。

よし、後片づけにとりかかろう。

華やかになった結婚披露宴会場に満足しつつ、床に散らばった花びらや葉を拾い始める。すると突然、腕を掴まれた。

えっ? なに?

驚きのあまり、拾い上げた花びらが床にハラハラと舞い落ちる。顔を上げると、そこにはよく見知った人物の姿があった。

足音も出さずに私に近寄り、腕を掴む人物の顔を凝視する。

「須藤(すどう)さん、花嫁になってくれ」

「えっ?」

ま、まさかこれって、プロポーズ?

心の準備もないまま投げかけられた言葉に、胸が大きな音を立てて飛び跳ねる。

でも、彼が私にプロポーズするわけがない。だって彼には、付き合っている女性がいるのだから……。

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