クラッカーにはご用心
「ごほごほ………」



蜜穿は剣から貰った花と紅茶を見ながら思い出す。



『お前なんかおらんかったらええんや、この疫病神が!』


『目障りなんよ、生まれてこなきゃよかったんに!』



涙さえ出ないのに、体は震え呼吸は荒くなる。



『ごめんなさいごめんなさい』



口に出るのはこんな言葉だけ。



『ええ子になる、ええ子にするから。だからなぁ……』



手に入らないと分かっていたけど、それでも無くなるまで求め続けたイミテーションラブ。



「正体知っても変わらんな…」



ハニービーと分かると裏の人間でさえ態度が変わるのに。



一般的でありきたりでも、ゆるやかな今を切り取って閉じ込めたい。


鮮やかと思えたこの景色が色褪せないように。



「まぁ無理な話か。実現不可能な現実やな…」



どんだけ裏の世界を知っても、


どんだけ大人の事情を理解しても、


どんだけ子供らしいない子供でも、



結局うちは何も出来ひんガキなんやと



蜜穿は自嘲する。



最も、借金の形に廓念会のフロント企業へ売られてからは、きっと無力なガキ以下だ。



命令に従って動くだけなのだから。
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