ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
ハルと次に会う約束をした前の日、私は高校のバレー部の友達と遊びに出ていた。

卒業式からまだ3日しか経っていないのにどこか新鮮な感じがしたのは、きっと私だけではない。

みんないつもよりテンションが高く、いつものショッピングもカラオケもかなり盛り上がっていた。

夜ごはんは何を食べようか?と相談しながら町をぶらぶらとしている時。

「うた、家でご飯食べるって言ってなかった?」

前を歩いていたバレー部一の長身、元部長が振り向いて私に聞いてくる。

そうなんだ「今日はお父さん早く帰って来るから、晩ご飯は家で食べてね」と言われていた。

お父さんは休みも少なくいつも帰りが遅いので、家族揃って晩ご飯というのはなかなか難しいのだ。

「えー?せっかくみんなで集まったんだから一緒にご飯しようよ」

別の友達がわざとらしく膨れつらを見せる。

そう、友達と遊びに来られることもしょっちゅうできる訳ではない。

もちろん両親もそれは分かっていて、私に無理強いすることはしないけれど。


やっぱり私帰る、そんな言葉はノドをつかえて出てこなかった。


「ああ……うん、じゃあそうしようかな」

「よし、じゃ行こう!」


そうは言ったものの、母親と父親の顔を頭にちらつかせながら、私は友達とのディナーに選んだ店へと入って行った。
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