欲情プール
「ホテルに着くまでの間、ダメ?」

乗り込むなり先手を打って、繋いでたらダメか甘えてみたけど。


断られて、渋々それを緩めたのに…

中々離れようとしない手の中の熱。


だったらもう離さない。

ぎゅっと捕まえると、気持ちはどんどん膨らんで…
茉歩が欲しくて堪らなくなる。


そう、策略には絶好のチャンスだし。
茉歩の苦しみを少しは減らせるかもしれないんだ。

そんな言い分を頭に並べて…



「許せないなら、同じ過ちを犯せばいい」

着いたホテルのエレベーターで、そう身体の関係を持ちかけた。

当然、意図を察した茉歩から驚きの視線がぶつけられる。


「たった1度だけ。
そしたら少し、楽になれないか?
例え許せなくても。
似たような立場になれば、苦しみは半減するんじゃないか?」

1度だけなら…
修復の必要悪として、茉歩の罪悪感を最小限に抑えられると思った。

そう前提すれば、お互い深みにハマらずに済むと思った。


「割り切った関係で、1度だけ…

嫌じゃなかったら。
このまま茉歩を、俺の部屋に連れて行く」

戸惑う茉歩の手を、再び強く握り締めた。
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