古い校舎が見える桜の木の下で
帰り道、俺は佐々木と一緒だった。

「佐々木、今日は嫌な思いをさせたな。」

「ううん。初恋の相手と言われて嬉しかったよ。
あのときは恥ずかしさもあって、
素直に『ありがとう』とか『うれしい』とか言えなくてごめんね。
それより、浩太の方が嫌なことを思い出したんじゃない?」

「あぁ。まぁな。
俺、大学在学中にJ2のチームの研究生になって、
プロの人たちと一緒にサッカーさせてもらって、
大学卒業と同時にチームの一員になったんだ。
ときどき先発で使ってもらえるようになった矢先にけがをして…。
全力でプレイすることができなくなった。
お遊びのサッカーならできるんだぜ。
ただ、選手として無理だと分かった時に正直、
やけになった時期があるんだ。
自暴自棄ってやつ。」

「ごめん、私が話を振ったから
言いたくないことまで言わせちゃって。」

「いや、佐々木なら受け止めてもらえそうな気がしたから。
佐々木に聞いてもらいたかった。」

「そっかぁ。いろいろあったんだね。」

「佐々木にもう一つ、聞いてもらいたいことがあるんだ。」

「何?」

「俺、今の佐々木も好きだ。こうしてなんでも話せてさ。
だから、今回のプチ同級会は終わったけど、
また、ときどき連絡してもいいか?」

「うん、もちろん。
私だって、丸刈りの浩太は丸刈りの浩太でいいやつだったけど、
今のかっこいい浩太も大事な友達だって思っているよ。」

「ありがとな。
まぁ、連絡するっていっても俺、
もうすぐ試験だから
それが落ち着かないとしないかもしれないけどな。」

「試験でストレスたまっている愚痴くらい聞いてあげるよ。」

「あぁ、頼りにしてるよ。」

「自分の夢をかなえる力がある浩太だもん、
試験もきっとうまくいくって祈っているよ。」
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