古い校舎が見える桜の木の下で
6.歩の部屋で
12月26日。俺は祐介に促され、上京した。
佐々木ときちんと向き合うためだ。

クリスマスの方が気が利いていたのかもしれないが、
スキー場でバイトをしている俺にとって
都合をつけられるのがこの日だった。

祐介が段取りをしてくれて、
待ち合わせの場所は、
俺と佐々木が打ち合わせによく使っていたファミレス。
午前中、バイトが入っていた俺は
バイトが終わると急いで東京へ向かった。

店の前に着くとすぐに祐介に電話した。
祐介は一旦店を出て、俺と一緒に店に入ってくれた。
俺と佐々木が無理なく顔を合わせられるようにと
彼なりの配慮だった。
俺の姿を見つけた佐々木は驚きと不安の表情を浮かべ、
涙をこらえているような感じだった。

「さぁ、浩太突っ立ってないで、こっちへ座れよ。」

そう促されて、佐々木の前に座る。俺が座ったのを見届けて、
祐介と佐々木の親友で祐介の彼女となった香苗がファミレスを後にした。

「佐々木、ごめんな。」

俺がそういうと、
佐々木の目から堪えていた涙がひとすじ、頬をつたった。

「きちんと話がしたい。これから、お前ンち行けるか?」

そういうとコクリと肯いた。

俺は会計を済ませ、佐々木の手をとり、店を出た。

「浩太、これ。」

彼女は俺が払った分のお金を差し出した。

「いや、いいよ。
佐々木にも祐介たちにも心配かけたし、
ドリンクバーだけのお金だしね。」
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