古い校舎が見える桜の木の下で
駅の方へと向かう。途中で佐々木が、

「ねぇ。コンビニ寄っていい?
この泣いた顔で明るいところに行くのははずかしいから、
化粧室で直してくる。」

「あぁ、いいよ。」

「ところで、浩太はご飯食べた?」

「いや。」

「うちで夕飯っていってもこれからじゃ、
チャーハンくらいしかできないけどいい?」

「お前、無理しなくていいぞ。俺はコンビニ弁当で構わない。」

「じゃあ、チャーハンは私が作るけど、スープとかはコンビニで。
あと、何か食べたいものがあったら、買っていくってことでどう?」

「了解!お前、買うもの決まっていたら言ってくれよ。
お前が化粧直している間に俺が買っとく。」

「ありがとう。お言葉に甘えて、私は春雨スープとプリンね。」

「あぁ、わかった。」

彼女が化粧室にいる間に
俺は言われたあいつの物と自分のものを買っておいた。

彼女のアパートへと向かう道すがら、
何を話したらいいかわからなかった。
込み入った話は彼女の部屋でじっくりと話すべきだと思っていたから…。
ただ、沈黙も気まずくて、俺からことばをかけた。

「俺、祐介に叱られたよ。お前ときちんと向き合えって。」

「うん。私も香苗に叱られた。浩太に気持ちを伝えなさいって。」

「うん。」

「ねぇ、浩太。私ね、浩太のこといつの間にか、
友達としてではなくて、
一人の男の人として見ていた。
浩太のことが好き。
浩太が気持ちをぶつけてくれたのに、
素直になれなくてごめん。」
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