隣のマキオ
午前中の仕事を終えて、同期の仲村千穂とランチに出た。

千穂は、もうすぐ結婚退職が決まっている。

「どう?準備進んでる?」

近くのカフェで生パスタランチを食べながら聞いた。

「うん、それがさ…」

千穂は、少し浮かない顔をした。

「むこうの母親がね、いちいちうるさいのよ…。なんかマリッジブルーになりそ」

「そうなんだ….」

結婚準備なんて幸せでしかないと思っていたが、向こうの親と嫌でも何度も会わないとならないのだ。

色々、面倒なこともあるだろう。

「こないだなんかさ、式場の料理の試食に行ったんだけど。前菜のテリーヌが美味しくないって文句いってさあ。そりゃあ、確かに特別美味しいわけじゃないけど、コースになってるわけだしさ。変更ってなると大変なのに。もう、まいったわよ」

千穂は、パスタをフォークでクルクル回しながらブツブツ言った。

「そうかあ。大変だね」

「あーあ、私も陶子みたいに結婚しないで、気楽に過ごそっかなあ」

「あのね、別に結婚しないって決めたわけじゃないからさあ!」

陶子は、慌てて否定する。

「だって、別れたんでしょ?彼。悟くんだっけ」

「その名前、言わないでー、まだ傷は、癒えてないんだからあ」

言いながら、そういえば、マキオのおかげで、いつのまにか悟の傷は癒えてるのかも…と思った。

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