隣のマキオ
いつものように満員電車に乗り込み、会社の最寄り駅からトボトボと歩いていると、後ろから、声をかけられた。

「宮前さん、おはようございまあす」

「あー、木下くん、おはよ」

2年目の木下正樹。23歳。

若い。

ああ、マキオも多分このくらいの年齢かなあ。

「ねえねえ、木下くん、ちょっときいてもいい?」

陶子は、好奇心が止められなくなった。

「はいっ。なんすか?」

木下は、今時のコらしく元気に食いついてくれた。

「木下くんの周りで、歳上のひとと付き合ったりしてる男の子っている?」

陶子は、自分のことと悟られないように気をつけながら話した。

「歳上ですか?そうっすねえ」

木下は、少し考えて「まあ、いるんじゃないかな?」と、サラッと言った。

「歳上の人って色々余裕あっていいんじゃないっすか?あ、ちなみに俺は、ダメっすけど」


自分の話にすぐ持っていくこの性格が、今日の陶子には、少しありがたかった。

「そうかあ、ありがとね。友達がすごい歳下好きになっちゃってさあ。相談されたから」

「へえ。身の程知らずってやつですかね」

ワッハッハと、笑いながら、先行きます!と、木下は、去っていった。

身の程知らず…

陶子の心に、グサリとささった。
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