【完】『大器晩成』
さて。
新聞に取り上げられることが増えた眞姫だが、鶴見の窯は相変わらず小さなままであった。
賞を受けたからと傲岸になることもない。
市場の魚屋や寿司屋の大将、またはその女将たちと気さくに付き合うのが日常で、たまに梓やセイラと小さな女子会を開くのが楽しみであった。
よく通っていたのは大将の紹介で行くようになった居酒屋で、ダンサーとしてロサンゼルスで暮らすようになった梓がたまに帰国すると、よく一緒にメバルの干物を肴に焼酎を飲む姿が目撃されたという。
いっぽう。
セイラはときどき、新しい彼氏でもある漫画家を連れて来るのだが、眞姫をよく口説こうとするので、
「生放送でバラすよ」
と灸を据える一幕もあった。
のちにセイラのところのカップルは同棲するのだが、その際に揃いの食器をあつらえてくれたのは眞姫で、
「これで別れたら眞姫に迷惑かけるんだからね」
と、暗に脅すような言い回しで、結婚できるよう伏線を敷いたことがあった。