【完】『大器晩成』

酒の席で眞姫は、例の麟太郎の「大器は晩く成る」の話をした。

「それはちょっとこじつけだなぁ」

と梓はしかめっ面をするほど否定的であったが、

「それはさ、それなりの物を作ろうとすれば時間がかかるって意味だよね?」

とセイラは言った。

「すぐに結果を出さなきゃいけないのは分かるけど、焦ったっていい結果なんか出ないと思うけどなぁ」

梓はそれに何かいいたげな顔つきをしたが、

「うちはこじつけでもなく焦りでもないと思う」

と眞姫は、

「要はさ、なかなか結果が出ないときの慰めみたいなもんなのかなって」

そう言い聞かせなきゃやってられへんやん、と酔った勢いで本音めいたことをぶちまけた。

「でもさ、うちが陶芸の世界に入って分かったのは、世の中は上手だからって注目される訳ではないってことかな」

だってあずにゃんなんか、スゴいダンスうまいのに売れてなかったんだよ…と、真実を衝いた。

これには二人も苦笑をするより他なく、そのまま酒の席は更けたのであった。



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