興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
夕方までDVDを観て、笑ったり泣いたり、賑やかな時間を過ごした。
好きなシーンが同じだから、泣けば同じように泣き、すっかり共鳴してしまった。
見終わると、これ里緒のだから返さなくちゃな、と、少し残念そうに課長が呟いた。


「藍原、この前は和食だったけど今日は何が食べたい?」

「んー、特にはありません。…急な事ですし?」

「んー、じゃあ、急に決めた俺が悪いみたいだから?俺の独断で決めてしまおう。…和食だな。な?」

「はい!私、何だかんだ言っても和食が一番好きですから、嬉しいです」

「…じゃあ、別のにするか…」

「はぁ?何ですか?それ。もう口が…和食になってるんですから。変更は無しですよ?」

「ハハハッ。解ってるよ。
俺も好きなんだ、和食屋に行くに決まってるだろ?…そんな顔も見たかったんだよ」

「え…何だか……狡いです、怒って損した気分です」

…急に恥ずかしい。

「フ。一杯見たいんだよ、藍原の色んな表情……」

課長…。今日一日で、知らない課長の一面が見られているのは私も同じです。あ、そうだ。

「あの…課長」

「ん?」

「これから出掛けるのに嫌じゃ無いですか?大丈夫ですか?」

「何がだ?別に、何も?」

「あの、偶然とはいえ、今日何だか課長と服の色の感じが被ってしまっていて。…すみません。
だから、何だかさりげなく色を合わせたカップルみたいに見えてしまうんじゃないかと…」

「あ、あぁ、そんな事か…別に大丈夫だよ?人の事なんか気にするな。
誰がどんな格好で居ようが自由だろ。俺は藍原に言われなきゃ気が付いて無い。逆に嬉しいけどな?…意識、してくれたんだな」

課長…。

「さあさあ、そろそろ行くぞ?ほら、バッグ持って、はいはい、出て。
…履いたか?行くぞ?」

あ、課長。何だか押されっぱなしです。
ん?引っ張られっぱなし?グイグイ、リードされてる感じです課長に。


「ほら、エレベーター乗るぞ」

「はい」

実際も手を引かれてリードされていた。
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