興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
この前のお店とは、また雰囲気の違う和食屋さんだった。

「藍原、先に約束を取り付けておきたいんだ」

「はい?」

何だろう。

「今週の水曜、帰りにご飯デートしてくれないか?
あ、デートって言葉は余計か。気軽な気持ちでいいから。
水曜に、ご飯を一緒に食べてくれませんか?藍原様」

「課長…。解りました。割り勘で、でしたらお受けします」

「いや、割り勘なんて…気を遣うな。俺が誘った時は俺に持たせてくれ。当然、今日のここもだ」

「でも…」

「俺にカッコつけさせてくれないかな?」

…でも…。

「解ってる、藍原の気持ちは」

そんな仲じゃ無いんだしってのがあるんだろ?

「あ、あと、それから、連絡先を教えて貰うのは駄目か?……アドレスだけでいいんだけど…」

「課長。そんな…控え目に言わなくても…。番号もアドレスも大丈夫ですよ」

「いいのか?本当に」

「はい。ちょっと待ってくださいね。
…あれ?…あれ?!…すみません課長。…携帯、忘れて来てます」

充電しっぱなしだ…あ〜忘れてた。バッグにいつも入れてるから。入ってるつもりで。
あ〜、これ…どっちにしてもいつものバッグじゃないし。

「嘘じゃないです。本当ですよ?バッグの中、見てもらってもいいです。
昨日実家に帰っていて、戻って充電して…そのままみたいです。本当です、課長」

「そんなに必死にならなくても大丈夫だ。解ってる。嘘じゃない事くらい解ってるから。大丈夫だ。
じゃあ、……これ。俺の番号。帰ったら鳴らして?アドレスも知らせるから。
あー、無くすなよ?」

「はい。しっかりバッグに入れますから。見てください、はい、入れました」

「ハハ。OK、確認した。あ、水曜は車だから」

「はい」

もう次のご飯の約束をしてしまいました…。
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