興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
本格的な最後の引っ越し。と言っても荷物は少ない。
これを運び出したら私はこの部屋には戻らなくなる。

段ボールに詰めた身の回りの物は課長が運んでくれる事になった。

住所を移したら人事に解ってしまう。
課長はもう公にして終えばいいさ、と言う。

そうなると課長と私は公認の仲という事になる。

思えば結果的に、幻の恋人は初めから思いを貫いた人だったと言う事になる。
私にとっては、望む人と嘘が真になった。
驚かれそうだな、課のみんなに。

最後に残るモノはベッド。
…これを後生大事に…いつまでも置いている事がいけないんだ。

忘れたく無いから?
忘れられ無いから?

どっち?
どっちも?

自分の心を知っているのは誰よりも自分。

あんなに、気になって興味がある人。
何、の部分を口に出してしまっては…思いが堰を切ってしまう。

何故それをしないのか…自分でも不思議なのだ。
ううん、良く解っているから。

違う次元の人だから。
自分の一部のような人だから。
失いたく無い人だから。

この関係に好きを持ち込むのが怖いから。

男女は…始まって終わってしまったら、元には戻れ無いから。
いい関係になれるとは思え無い、…男女を意識した後では。

坂本さんはずっと失いたく無い人。

こんな気持ちは理解されない。
終わりがあるなんて思うから駄目なんだって、馬鹿な考えだと言われるかな。

自惚れかな…。


カチャ。

え?
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