興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「坂本さん…」

……どうして。

「何で言わない」

「え?」

「藍原の、思ってる事をだよ」

あっ。抱きしめられた。

「……この中に隠し込んでる気持ちだよ」

「…離して。何もありません。…離してください」

「正直に話したら解放してやる。…正直にだ」

そんな事…言いたくない…言えない。

「そうか、わざとか。離れたく無いから話さないのか。
それなら、それでも構わないぞ。ずっと抱きしめていられるからな」

…違う。そんな…そうじゃない。

「どっちも答えられないのか?」

…。

「藍原はいつも言わない。肝心な事は何一つだ」

どれだけ俺を悩ませる。

「返事をしたら困る、困らせると勝手に思ってるからだろ?
解決も出来ないのに、自分の中で自己完結しようとするな…。
言うまで離さないぞ。…それが望みだもんな?」

違う。これは誘導尋問よ。上手く理解されない事を正直に話すなんて出来ない。

………あ、…何故…。理解されないなんて決め付けてるの?
二人、同じ思いなら、理解してもらえるんじゃないの?

少し身を引いた。
坂本さんの顔を見た。

「…話す気になったんだ」

はぁ、この人には元々、何も隠せないのに。

「…失いたく無いからです。私に取って坂本さんはそんな人なんです。
好きとか嫌いとかそれだけでは無いんです」

でも…好きなのは確か…。はぁ…、言って終った……。

「何だ、一緒じゃないか」

「え?」
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