興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「藍原はアルコールはどうなんだ?いける方なのか?最近は会社の飲みってめっきり減っただろ?
それこそ、あるのはたまの送別会ばかりだ。寿やら、自主退社やらのな。誰がどれだけ飲めるかも、よく解らなくなったな」

「そうですね、私が入社した頃は、まだ多少ありましたかね」

「ああ、そうだな。5年前はまだ飲み会は結構あったよな。幸か不幸かだが」

「あ、私は、そんなに飲めません。でも、場の雰囲気は好きなんですよ?」

「そうか。ん。じゃあ、料理は何が好きだ?」

「あまり詳しく無いですし、畏まったところの料理も知らないですし。…行きませんから。
普通に和食が好きです。後は…中華、ですかね。
イタリアンて言っても、自分の中ではパスタかピザくらいですから」

いい歳の女としては全然お洒落じゃない…言ってて寂しくなってきちゃう。

「そうか。じゃあ和食の店にしようか、な?」

「はい、嬉しいです。あの…課長」

「ん?」

「いえ、あの…」

「なんだ?マンションの次は何が知りたいんだ?」

「え?」

…そんな…課長……。

「ん?マンションの間取りの話をしただろ?だから、二人で住むところの次は、披露宴とか、式の話かなと思ってな。違ったか?」

二人で住むところ…、式…。そんな事、すっと出るなんて…。課長がまさに、今、差し迫ってる事なのかも知れない。だから…。

「あ、いえいえ、違います。なんでも…ありません…」

「ん?じゃあ、と、そうだな…インテリア、内装か?」

あー、どうしようかな…。もう、意味はないのかも知れない。
課長の事は確かめられなくても…でも、誤解だけでも…自分の噂の誤解を解いておきたいんだけど。

「あの、課長、…私の噂って、知ってますか?」

…はぁぁ、聞いちゃった。

「噂?いや。噂って、どんな噂だ?」

ピンと来ないのか、それとも惚けてなのか、……本当に知らないんだろうか。…聞かなきゃ良かった。もう、仕方ない。

「…それは…私に、恋人が居るという噂の事です」
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