興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「……何でも無いです。ちょっと、情緒不安定なだけです」

藍原…。

「何でも無くなんか無いだろ?何かあるからおかしいんだろ?」

「…坂本さんが言ったんですよ…」

「ん?」

「まだ、泣いてないだろって」

「…ああ。確かに。言ったよ?」

「だから、まだ泣けないんです。だから、おかしいんです。限りなく決着に近くても、まだ決着じゃないから、まだ泣いちゃいけないんです。だからまだ泣けません。…失礼します」

「あ、おい、藍原…」

…決着に近いって。さっきまで課長が居たよな。何か話したのか。そうだよな、あんな顔して…。結果待ちか?にしてはもっと辛そうだったな。
朝、あんなに、よく眠れて気分がいいって言ってたのに。もう…苦しくなったのか。何か話したのなら、なるようにしかならないか。

まだ言えてないのか。しかし、…よく解らないな…。
好きなら好きだと普通に伝えたら、結果はどうあれ、済むものなのに。
そこまで辿り着けないのは何故なんだ…。勇気か。断られたらって、思うと踏み出せないのか。同じ会社、…部下だからな。結果の状況によれば、辞めてしまうかも知れないか。
それがあるから、好きと言えないのか。

人の心は何かで変える事なんて不可能に近いんだよな。横槍なんか入れても、終わってない心は向いてもくれない。
どんなに深く思ったからって、一方通行では永遠に実らないモノだ。

ただ幸せを願うのみだな。
…俺に言ってるんだよな。これは俺にだよ。
あー、もー、…なんて出会い方をしてしまったんだろうなぁ。
金曜に会うんじゃ無かった…。
日曜に引っ越しの挨拶で訪ねるんじゃなかった。
じゃあ、月曜が出会いの始まりで良かったか?
それも…月曜も結局駄目だな。
はぁ…。どの日に会っていたとしても、俺の心は結局藍原に囚われてしまっていただろうからな…。その肝心の藍原の心は…違う人に囚われている。そこに俺は…ない。
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