興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
あ、何……。…それは、…そんな言い方をされたら解らなくなる。
部屋の明かりを消して、暗闇の中、一人になったら、また思い出して何か込み上げて来るのかも知れない。
でも今は解らない。
でも、だからって…。

「さ、寂しくなんか…」

「…何も感情がないなら、こうして居ようか?」

感情がないって、どういう事の?

「藍原が俺と…、今こうしていても、全然動揺がないようなら、一緒に居ようかって事だ。
藍原にとって俺は人畜無害みたいだからだ。…利用したらいいって事だよ。
まぁ、ちょっとだけキスした前科はあるけどな。……大丈夫なんだろ?」

あ、言われてみればそんな事あったんだ。…自覚がない。
私、なんで坂本さん相手だと呑気で寛大になってしまうんだろう。怒るには怒ってるはずなんだけど。…ん〜。

「そろそろ決めてくれ。今夜、俺が必要か必要じゃないか、答えてくれるか」

…あ、何だかんだ言われている間も、ずっと抱きしめられているんだった。
何故、もっと早く、強く拒否しないんだろ…。こういう事…、癖になってるの?……癖?習慣?違う、癖でも習慣でもないわよ。でも…。
ん〜。この状態が安心出来ているって事なんだろうか。

……え…何…これって、じゃあ…何?…。

詳しく話はしていなくても、私の辛い場面を知っている人だから?
だから許せるの?……許せる?………平気なのかな…。平気ってことだ。

「藍原?」

あっ。待たせているのよね、どうするか。

「坂本さん…よく解らないです。だけど」

「…だけど?」

「さっきからずっと抱きしめられていて…安心している気がします。それは確かかも。もっと言えば」

「…うん」

「今、このまま離れたら、寄り添うモノが無くなって、孤独になりそう、かもです。これって甘えてますか?……違いますよね?もう既にこうなってるのを離すからです、きっと。
つまり…一人で居る寂しさに負けてしまいそうかも、という事です」

全く…目茶苦茶だ。結局、弱音……?それだけははっきりしてる…。
はぁと息を吐いたのが解った。ギュッとされた。

「じゃあ、今夜、俺はソフレだな」
< 52 / 166 >

この作品をシェア

pagetop