興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
ふぅ。何だか…。
こんなに沢山買って、一つくらいは食べてもよさそうなものなのに、全然食べる気がしない。
元々、食べる目的じゃないから。大量だろうと何だろうと、買ったという事で満足してしまった。
そうよね…気持ちを逸らす為の買い物だったんだから。

お風呂上がりにお水に手を伸ばしても、隣のスイーツの容器にはいつまでも手は伸びなかった。


コンコン。…コンコン。

ん?ノックの音?うち?

…。

誰?…どうしよう。

そっと覗いて見た。
え?坂本さん…。

…どうしよう。…どうして?

……カ、チャ。

「藍原…」

うわっ…まただ…。

「フ…相変わらずだな。毎回こうだと、俺、男として自信無くなるな…」

「あの…どうしたんですか?」

「…うん。藍原が、人恋しくなってるんじゃないかなぁと思って、さ。それで来てみた」

「それでこの訪問ですか?」

「うん、そう」

…満面の笑顔で…。

「藍原、悲鳴あげないんだもんな…。俺って、…どんな存在?」

…え、存在、って…。

「だって、前も言いましたけど…いきなり過ぎて」

「いや、人って、いきなり思いもよらない事されるから、悲鳴って出るんじゃないの?
あれかな…藍原は、俺に抱きしめられるのは、もう許容範囲になってるのかな。だからいきなりでも悲鳴が出ないんだ。受け入れてるんだ」

許容、って…。受け入れてるって…考えてみたこともない。

「……もう…何言ってるんですか。もういいですか?離れてください」

「…いいけど、…大丈夫なのか?離すのは簡単だけど、一人になったら辛く無いのか?」
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