興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
慌てて帰る必要なんか少しも無い。
晩御飯だって、折角作ったんだ、一緒に食べて帰ればいいものを。
だけど、何か、ひと区切りついた感じがして、とにかく自分の部屋に帰りたかった。

そんなに長い期間では無かったが、平日の夜から朝、休日は一日中…自分の時間は取れなかった。

葵がやっと安定して退院出来た。
…良かった。悲しい事にならなくて。
お腹の中に芽生えた命、失いたくないもんな。良かった。

はぁ、…。
里緒の服はこれだけだったかな。
残って無いよな。
…。
殆ど葵の部屋で世話をしたから、洗濯したこの服だけだよな。
やっと見つけた適当な紙袋にそれを入れた。

何かあったかな…。
パスタでも作って食べるか。
キャベツと…ちりめんじゃこ…ペペロンチーノにするか。
は…こんな事なら葵ん家で食べてくれば良かったな。…フ。
ま、これが俺の日常なんだし。

土曜も日曜もまだ無理か…。
藍原…。
いつだったら時間が取れるだろう。
まともに話を聞いてくれるだろうか。
何だか俺の話になると、極端に避けようとしている気がしてならないんだけど。

…ずっと好きだった、…か。
…。
そんな告白されてもだな…。

俺は、藍原…。
プシューッ。

「うわっ、…溢れるっつうの」

パスタのザルを引き上げた。
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