興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
こんな事を言われて、連絡される日を待ち、更にその日が来るのを待つ日々を送るなんて…。
これでは、心がいつまで経っても落ち着かなくて、ちっとも整理をつけられないじゃない。

ずっとフツフツとしていなきゃいけないのよ?
課長、いつ時間が作れるのかしら…。
私に何を言うというの。

自分から正式に振るという事?
振るには振る理由をちゃんと説明したいの?
私から一方的な告白をされたままだから?

だから、自分が結婚する。
だから、藍原の気持ちには応えられない。
だから、断る。

そう言いたいのですか?

言葉にしたら、たったこれだけの時間で済む事ですよ?
それをわざわざ会って、面と向かってこんな事を言われるの?

それは、もう、さすがに辛い。
触らずにそっとしておいてくれないものだろうか。

誰かに言いたい…。
私には恋人なんて居ません、と。
恋人が居るなんて嘘です。
昔、誰かに勝手に作られた嘘話ですって。

誤解を解いても今更だ。もう27歳。
微妙に何かと難しい…。
実はずっと誰も居なかったらしいって…哀れな目で見られるだけかな。
噂に上手く乗っかっていただけじゃないかって。
別に自慢げな顔をしていた事は一度も無いけど。否定して来なかったんだから同じことなのか…。


ふぅ。…。

ブーブー…。…お父さん。

【紬、父さんだ。一度、彼に会わせてくれないか】

…もう、…どうして、こんな時に、こんなメールなんか…。
ごめんなさい、お父さん。
また、嘘に嘘を重ねます。

【今ね、仕事が忙しい時で、中々時間がないの。
もう暫く待って欲しいです。 紬】

嘘つき…。
ごめんなさい、お父さん。

【忙しくても休みの日くらいあるだろ】

その通り…そうよね、…そうよね。

【とにかく、都合を聞いてみないと解らないから、また連絡するね】

【ちゃんと連絡して来るように】

ゔ…何だかバレてる気もするなぁ。
腹の探り合いをしているみたいで…嫌になる。

「はぁぁ」

「遠慮のない盛大な溜め息だなぁ」

え?、あ…。

「坂本さん…」
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