興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「これ、頼める?」

書類を受け取った。

「今日中じゃなくて大丈夫だから。明日、出来てたらいいやつだから」

「え、はい?…解りました」

「…どうしたんだ?」

少し小声で聞かれた。

「え?あ、はい。…何でもなくはないです。色々とあってですね…」

誤魔化したって坂本さんには通じない。

「…そうか。変だと思ったんだ。夜、邪魔するから、さ」

「えっ?」

「シーッ…。聞くよ、って事。じゃ」

あ…坂本さん。…もう。
肩に軽く手を触れると、もう居なくなっていた。
…流石です。…素早い。
何だか……声を掛けられ、聞くよ、と言われただけで、楽になった気がします。何を話した訳でもないのに不思議。
明日でいいって言ってたけど、もしかしたら…。
これは明日じゃなくても…永遠にしなくてもいい書類なのかも知れない。


はぁ。早くお父さんに本当の事を言った方がいい。
また、お見合い写真を持って来られる日々はしんどいけど。その方が気持ちは楽でいられる。
帰ったら電話しないと。
…はぁ。

私ったら…何年も何をしていたんだろうな。…本当に、もう。長い間、告白もしないで、ジーッと気持ちを寝かせていた罰かな。
だから、早く誤解を解いて、告白しておけば良かったのよ。
後悔先に立たずとは、まさにこのような時に痛感する言葉だ。
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