夢を忘れた眠り姫
そこでハタと気が付く。


……それを言ったら落合さんだって別に、自らイケメンだと主張している訳でもないし、ビジュアルを売りにした仕事に就いている訳でもないではないか。

日々の業務の中でほんの少し接した機会があり、オーバーアクションというか芝居がかっている言動にちょいと面倒臭さは感じたものの、基本的にはフレンドリーで良い人だ。

こんな風に心の中で陰口を叩くのはよくない。

そして。

同じくバリバリ一般人である貴志さんのビジュアルについても、偉そうに評価しまくっていた事を思い出した。

矛盾極まりない身勝手な思考に、遅ればせながら猛反省。

そして改めて、私には貴志さんのあのレトロでアナクロなヘンテココーデに口を出す権利などないのだという事を実感する。


「あ、永井さん!噂をすれば!」


成り行きでお二人と共に庶務課へと向かう事になり、部屋を出た所で、先頭にいた近藤さんが進行方向を指差しながらテンション高く声を発した。


「愛しの彼のお出ましだよ~」

「ホントだ。ナイスタイミング!」


山瀬さんも同じノリでそれに続く。

その言動に促されてそちらを見やると、ちょうど隣の男子ロッカールームに入ろうとしている貴志さんの姿があった。

当然、ここまでの話の流れを知らない彼は、自分を見ながら何やら盛り上がっている先輩方の姿に目をパチクリとさせている。
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