夢を忘れた眠り姫
毎朝恒例のミーティングを経てから、通常業務へと移行し、普段と変わらぬルーティンワークを黙々とこなしているうちに、午前中は瞬く間に過ぎ去った。


「つくづく思ったんだけど、永井さん達ってホント、カップル特有の空気感を全く振り撒いてないよね」


社食のテーブル前にいつものメンバーと腰掛け、各々が選んだ料理を食し始めた所で近藤さんが発言した。


「特に今日はいつも以上に『ただの職場の同僚感』が強く漂っていたような気がする」

「え。そ、そうですか?」

「うん」

「お互い忙しいですからね…」


答えになっているんだかなっていないんだか、自分でも良く分からない事を言ってお茶を濁す

……まぁ、実際私達、カップルじゃありませんからね…。

それどころか只今冷戦真っ最中だし。

いや、『冷戦』だなんて、さも自分も対等な立場であるかのような単語をチョイスするのはおこがましい。

ただただ私が一方的に貴志さんを怒らせ、避けられてしまっているだけだから。

しかし近藤さん、だてに常日頃から色んな人の懐に深く入り込んでいる訳じゃないんだな、と思う。

他人の心の機微を読み取る能力がずば抜けて発達している。


「えー。そこが良いんじゃない。TPOを弁えてて、良識的なカップルだと思うよ」

「うんうん。温かい気持ちで見守りたくなりますよね」

「職場でいちゃこらされたら正直対応に困るし大迷惑ですよ」
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