夢を忘れた眠り姫
「相手の気が変わってしまったのよ。すぐに目ぼしい青年が見つかるかと思っていたのに一向に現れる気配がない。その事だけに時間を割いていられないし、もうこの話はなかった事にしてくれって」

「そうなんですか…」


とうとう諦めたのか、大文字清太郎。

じゃあその件についても、ベンさんから後ほど連絡があるだろうな…。

というか、そもそもメインはそっちだしね。


「真守が早いとこ名乗り出ていれば、もしかしたら見初められたかもしれないのに。あのじいさんもじいさんよ。自分で言い出した事なんだからもうちょっと粘りなさいよっ」


母親はブツブツと独り言のように言葉を吐き捨てたあと、再び私を睨み付けた。


「何しろ悪いのはあなたよ!あなたが邪魔するから、真守は最大のチャンスを逃したのよ!」


予想通りの主張を母親は繰り出す。


「あの子はもっとレベルの高い相手と結婚して幸せにならなくちゃいけないの!次のチャンスにかけるんだから、今のうちにさっさと別れなさい!」

「…そうやって、歴史を繰り返させるおつもりですか?」


しかし私は怯むことなく、彼女の瞳を真っ直ぐに見据えながら問い掛けた。


「あなたは愛する人…隅谷さんと正式な夫婦になれなくて、周りから祝福されながら結ばれる事ができなくて、とても悲しく辛く、悔しい思いをしたんじゃないんですか?その思いを真守さんにも味あわせるつもりですか?」
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