夢を忘れた眠り姫
「人の気も知らないでっ。あんたにそんな事言われる筋合いない!」


この上なく恐ろしい形相で睨まれているけれど、しかし、私はそんなことでは負けない。

この人に、とことん言ってやらないと気が済まない。

この人の凝り固まった思考から、意地や見栄やプライドからなる息子への執着心から、彼を解放してあげたいから……。

なので更にバトルを続けるべく、私も立ち上がったその時。


「うるさいのはあんたの方だ」


リビングの出入口付近から低い声が響いて来た。

思わず母親と共にそちらに顔を向けると、廊下で話を聞いていたらしい貴志さんがすっと姿を現す。


「ま、まもる…」

「ここで何をしているんだ?」


そしてそのままこちらに向かって歩を進めながら、貴志さんは母親に問い掛けた。

しかし彼女は気圧されたように黙り込んでしまう。


「……なぜこの女を家に入れてしまったんだ?」


すると、至近距離まで来て足を止めた貴志さんは、今度は私に視線を合わせ問い詰めて来た。


「二人きりで何かされたらどうする。弁護士が間に入ってくれているんだから、とっとと追い返すべきだろ」

「……どうしても、お聞きしたい事があったから…」


掠れる声を一度咳払いして整え、私は続けた。


「彼女にどうしても伝えたい事があったから、こういう場を設ける事にしました」
< 251 / 277 >

この作品をシェア

pagetop