夢を忘れた眠り姫
貴志さんは勝手に自己完結したようで、そう話を締めくくった。


「まだ猶予はあるし。その間に頑張ろう」

「??」


訳が分からず困惑している私とは対照的に、貴志さんは何やらすこぶる楽しそうだった。


「ひとまず、夕飯を食おうか」


そして彼はそう言いつつソファーから立ち上がる。

そこに座り込んだ時とは違い、とても機敏な動きだった。


「腹が減ったし、色々やりたい事もある。明日も仕事だもんな。いつまでものんびりとはしていられない」

「そうですね」


これまたその意見に異議はない。

素直に頷き、そして私達は一旦着替える為にそれぞれの自室に向かった。

数日ぶりに取り戻した日常。

以前は自覚していなかったけれど、それを維持できるというのは、とてもありがたくて幸せなことだった。

もう、うっかり手離すことなどないように気をつけよう。

この気持ち、心構えを忘れないでおこう。

その後夕飯を食べ、先にお風呂を使わせてもらい、諸々の雑用を片付けて自室に入り、アラームをセットしようとケータイを手にした所で、ほんの数分前に、ベンさんから着信があった事に気が付いた。

メール派の彼にしては珍しいと思うのと同時に、それだけ急ぎの用件なのだろうと推測する。

残されていた伝言メモを再生した後、折り返しかけてみることにした。


『はいよ』

「あ、ベンさんこんばんは」
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