夢を忘れた眠り姫
「だって『私達の行く末を見守っていて下さい』だなんて。あんな偉そうなこと言っといて私達、一年後には別れるんですもんね」

「……やっぱあの時のあれはその場しのぎの方便だったのか」

「もちろんです」


貴志さんの確認に私は再びコックリと頷く。

だって貴志さんには貴志さんの人生があるもの。

私がいつまでもまとわりついている訳にはいかない。


「そっか…」

「その時に『大口叩いといて、結局別れたじゃない!何なのよあの女!』って、お母さんに言われてしまうんだろうな。そう考えるとちょっと悔しいかも」

「……だったら、そうならないようにする方法もあるけど」

「え?」


貴志さんが何か呟いたけれど、あまりにもボリュームが小さくて聞き取る事ができなかった。


「あの、すみません。今なんて…」
「俺、基本的に甘いものは苦手なんだ」


しかし私の問いかけを遮るように、今度は明瞭な口調で貴志さんはそう言葉を発した。


「でも、唯一、栗ようかんなら抵抗なく食える事実に気が付いた」

「え?ああ、栗が入っているからじゃないでしょうか?」


なぜに突然スイーツの話?と思いつつ、自分の考えを述べる。


「甘さが良い感じで緩和されて。だから前に栗ようかんの話になった時に言ったじゃないですか。『私は大好きですよ』って」

「いや、そういうことじゃなくて…」

「え?」

「……ま、いいや」
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